高齢者によくある疾患
アルツハイマー型認知症(全認知症の半数)
脳内にアミロイドβと呼ばれる異常なたんぱく質が沈着することによって起こる病気です。このたんぱくの毒性は、正常な神経細胞を脱落させ萎縮させます。進行するにつれ脳全体が縮んでいき、結果としてさまざまな症状(中核症状・周辺症状)を呈するようになります。
進行のしかたは比較的なだらかで、男性に比べ女性の高齢者に多いとされている病気です。
血管性認知症(全認知症の約2割)
脳卒中にともなって起こる病気です。脳卒中には脳内の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血があります。病気によって血流が行き届かなくなった部分の脳細胞がダメージを受けるため、認知症が起こります。
脳卒中は再発することが珍しくありませんが、そのたびに脳へのダメージが積み重なり、機能がガクンと低下するので、進行のしかたは階段状になっていきます。60~70代の男性に多い病気で、梗塞や出血が起こった場所やその大きさによって症状の出方が違ってきます。
びまん性レビー小体病(全認知症の約1割)
脳の中にレビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質がたまり、大脳全体に広がっていきます。その結果、脳の諸活動に障害が出るのがレビー小体型認知症と考えられています。この病気は幻視のような特徴的な症状が見られます。理解力・判断力が比較的しっかりいるときとしっかりしないときがあり、両者を繰り返しながら進行していく点にも特徴があります。
また、レビー小体が運動機能を司る脳幹部に広がると、歩行など体の動きに支障が出ます。これをパーキンソニズムといい、パーキンソン病と共通するような症状が現れます。
前頭側頭葉変性症
(前頭側頭型認知症,意味性認知症,進行性非流暢性認知症)
前頭側頭葉変性症は脳の病変部位により、前頭側頭型認知症、進行性非流暢性失語症、意味性認知症に分類されます。
前頭側頭型認知症と意味性認知症はアルツハイマー型認知症に比べて、比較的若い時期に発症するといわれています。
1 前頭側頭型認知症
萎縮が前頭葉と側頭葉に強く出るタイプの認知症です。前頭葉は理性や気力、性格を司り、側頭葉は言語等を司っています。
- 前頭葉の障害のため無気力が長年続き、次第に記憶や見当識が低下するタイプがあります。
- 「自己中心的な言動」や「反社会的な行動」、「会話がかみ合わない」などの特異な症状が出るタイプもあります。比較的早期に人格変化を来すピック病もここに分類されます。
○ピック病の症状
- 人格、性格変化(軽々しくなった・騒々しくなった・派手になった・動かなくなった・非常識になった)
- 滞続言語(状況とは関係のない話を繰り返す)
- 失語症(単語が出なくなり、徐々に言葉として話せなくなるが、人格変化は見られず物事の理解もできる)。
2 意味性認知症
意味性認知症では、初期から言葉の意味が理解できなくなります。進行とともに言葉数が減り周囲との疎通が困難になっていきますが、多くの場合、他者には礼儀正しく穏やかに接することができます。さらに進行するとピック病に似た症状がみられ、人格・行動障害が顕著になっていきます。
3 進行性非流暢性認知症
話をしようとしても話はつかえ、しゃべり方も遅く、リズムや抑揚に乱れがでてうまくしゃべれません。また次の言葉がなかなか出てこないため、無口になり、ほとんど話をしなくなります。
嗜銀(しぎん)顆粒性認知症
Braakが命名した嗜銀顆粒が脳内に沈着します。高齢で発症することが多く遂行機能は比較的保たれます。進行はゆっくりで、易怒性、頑固、自発性低下など、前頭側頭型認知症と共通の症状を示します。抗アセチルコリンエステラーゼ(抗認知症薬の一種)には無効です。
その他
DSM-5という疾患分類が2014年10月に日本語訳されました。この新分類では、認知症は①複合的注意②実行機能③学習と記憶④言語⑤知覚ー運動⑥社会認知の6つの主要な領域について障害の水準,重症度が判定されることになっています。認知症と軽度認知障害のいずれかに分類され、後者は日常生活における障害は殆ど目立ちませんが、早期の予防的な治療,介護を可能にするための神経疾患の診断です。
クリニックで診ている疾患(上記以外)
適応障害(うつ状態)
適応障害は、社会的ストレス(離婚、失業、病気など)や心理的ストレスによって起こる病気です。症状は多彩で、うつ、不安、焦りなどの症状が現れますが、明らかなストレスがなければ起こりません。仕事や家事など、日々の生活が計画的・継続的にできなくなってしまいます。
一般的には、そのストレスにさらされてから3ヶ月以内に症状が出現し、ストレスから解放されると、6ヶ月以内に症状が改善すると定義されています。症状の出方によって治療法は異なりますが、家庭や職場などにおける環境整備も必要になってきます。
更年期障害
更年期とは、性成熟期から生殖不能への移行期(44~55歳)を指します。
女性の閉経は平均で51歳といわれていますが、女性更年期障害の時期にはのぼせ・冷え・うつ・神経質・動悸・体のほてり(ホットフラッシュ)・脈が速まる・多汗・月経異常・めまいなどがあります。
当クリニックでは採血によるホルモン検査、漢方治療、食養指導を基本にしますが、患者様と相談して向精神薬による薬物治療を行う場合もあります。
うつ病性障害
典型的なうつ病では、気分が落ち込む、疲れやすい、意欲がなくなるなどの症状が現れます。環境が影響していることもありますが、脳内のある物質のバランスが崩れることによって生じるとされています。
この病気にかかる頻度は非常に高く、生涯を通してみると女性では約25%、男性では約12%で、女性は男性の2倍となっています。治療の原則は休養することですが、薬物(抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬など)療法の他、希望に応じて運動療法、食養、カウンセリングを行います。
パニック障害
パニック障害は、いかなる特別な状況、あるいは環境的背景にも限定されない、予知できない反復性の重篤な不安(パニック)発作です。動悸・胸痛・窒息感・めまい、および非現実感の突発が共通しています。
パニック障害の治療法は心理的なアプローチと薬(抗不安薬、抗うつ薬)によるものが代表的ですが、薬物の効果があっても断薬までには数年かかることがよくあります。
双極性障害
双極性障害は、気分が高まったり、落ち込んだりを繰り返す脳の病気です。躁状態では、Ⅰ型だと、気分が高まって誰彼かまわず話し続けたり、全く眠らずに動き回ったり、ギャンブルに全財産を掛けるなど“元気すぎる”症状が見られます。Ⅱ型だと、いつもよりは「何でもできる」と思えるくらいの”元気すぎる時期がある”という程度でも軽躁といいます。
一方うつ状態ではゆううつな気分が続いて眠れなくなったり、生き甲斐だった趣味にも手を出さなくなったり、意欲が低下し体を動かさないなどの“おっくうがる”症状が見られます。
双極性障害は、世界では約100人に1人が発症するといわれますが、日本では老年期まで幅広い年齢で発症する、珍しくない病気です。
うつ病や統合失調症など、双極性障害と似た症状が現れる病気もあり、一度の診察では判断しにくい場合があります。継続して診察を受けることが必要です。
統合失調症
統合失調症医とは、幻覚(あるはずのないものが見えたり聞こえたりする)や妄想(事実ではないことを事実だと確信すること)という陽性症状、社会的なことに関心が持てない、無為(何もせず無目的に過ごす)や自閉(引きこもる)という陰性症状、認知機能低下が見られるこころの病気です。
人種や性別に関係なく約1%の頻度でみられる病気ですが、早期から適切な治療を受けることで、以前に比べると早期に回復するようになりました。この病気で一番大切なことはきちんと治療すること。定期的な通院をしながら仕事をすることもできるので、焦らず、気長な治療を心がけることです。また病状によっては、作業所やデイケアなどを利用しながら回復を目指すのがよい人も多いです。
漢方治療やショートケアを希望する方
*漢方を希望される方には腹診、舌診などで処方します。
*運動、食養のショートケアを開催しています。
・3割負担の方で約1000円くらいです。
・ホームページをみて電話でお問い合わせてみてください。
・他の医療機関との併用も可能です。
・食養は一般の方も来られています。